HaKaSe診断を用いた配属の最適化と効果検証 ― 人 × 組織の相性分析 ―

HaKaSe診断を用いた配属の最適化と効果検証 ― 人 × 組織の相性分析 ―

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要約

本レポートでは、パーソナリティ診断ツール「HaKaSe診断」を用いた人材と組織の相性分析について、その有効性を入社後の適応指標から検証した結果を報告する。新卒社員の配属はキャリア形成や定着に影響する重要な意思決定であり、データに基づく客観的な配属判断へのニーズが高まっている。本検証では、HaKaSe診断を導入する異業種2社の新卒入社者を対象に、入社時点のHaKaSe診断により算出される相性スコアと入社半年時点の適応度合を数値化したピアレビュースコアの関係性を、平均値比較と相関分析の2手法により分析した。その結果、相性スコアが高い層ほど半年後のピアレビュー評価も高い傾向が両社に共通して確認され、いずれも統計的に有意な正の関連が認められた。

1. HaKaSe診断を用いた相性分析

1.1 概要

HaKaSe診断は、個々人の反応・思考・行動といった多層的な性質を測定し、数値化したデータを各種分析へ応用できる点に強みを持つ性格診断ツールである。心理学で広く使用されているビッグファイブ理論を土台としつつ、対人コミュニケーションの分析手法である交流分析の知見を組み合わせることで、その人がどのような性格かにとどまらず、職場でどう振る舞い周囲とどのような相互作用を生むかまで予測できるよう設計されている。本レポートで扱う相性分析もその応用の一つであり、配属先の組織単位の性質と個々人の性質のマッチングを数値化することで、より最適な配属の実現を意図している。

1.2 算出ロジック

相性スコアの算出にあたっては、HaKaSe診断の結果を直交座標※1へ変換し、対象者と配属先組織全体との間のユークリッド距離を基礎として「人×組織の相性スコア」を数値化している。実運用では座標変換の際に一部重みづけを施しており、過去データから特定された、新入社員の適応において重要な因子に比重をかけるロジックを採用した。これにより、単なる性格の近さではなく、適応に資する軸を重視したスコアリングが可能となっている。

※1「創出/改善」と「直感/分析」の2軸による直交座標変換により、対象者の特性を4分類で可視化する。

2. 検証方法

2.1 概要

本検証では、HaKaSe診断の導入企業において、新卒入社時点の対組織相性スコアと、入社後の活躍・適応との関係性を分析した。

2.2 集計対象

集計対象には、HaKaSe診断を導入する異業種2社(以下、A社※2およびB社)を選定した。いずれも、精度の検証が行いやすい新卒※3を直近数年にわたり100名規模で採用しており、かつ対象者および配属先組織のHaKaSeデータが一定量蓄積されている企業である。対象者は、2023年から2025年に新卒入社した社員とした(n=487)。

2.3 説明変数と目的変数

説明変数には相性分析により算出されるスコア(0~100)を、目的変数には入社半年経過時点のピアレビュースコア(0~10)を設定した。ピアレビュースコアとは、HaKaSeサービスのオンボーディング支援の一環であるピアレビューを通じて測定される指標であり、業務上の関わりがある社員複数名からの評価※4をもとに算出される。基準日については、一般に新卒の適応に要する期間が半年から一年ほどであること、および相性スコア算出時に参照した入社時点の組織情報が極力維持される時点であることを踏まえ、入社後半年のデータを採用した。

2.4 分析手法

結果の頑健性を確認することと、視認性を高める目的で、分析は2手法により実施した。第一に、相性スコアによって分析対象者を群分けし、区分ごとに半年後のピアレビュースコアの平均値を比較することで、層間の差を可視化した。第二に、相性スコアとピアレビュースコアの相関係数を算出し、統計的な観点から2変数間の関係の有意性を検証した。

※2 本レポート作成にあたり企業名や個人名はマスキング処理を施している。

※3 中途入社者はスキルや経験等が適応の交絡要因となるため、本分析では新卒入社者のみを対象とした。

※4 質問文:あなたはこの人と一緒に働くことを、上司や同僚にどの程度オススメしますか?(*0〜10の11段階評価)

3. 検証結果

3.1 平均値の比較

各群の分析対象者数に大きな偏りがないようにするため、相性スコアを「65未満」「65以上75未満」「75以上」の3区分に分け、各層における入社半年後のピアレビュースコア平均を比較した。A社では、65未満の層(n=51)の平均が7.20、65以上75未満の層(n=95)が7.55、75以上の層(n=118)が7.64であり、65未満層と75以上層の差は0.44ポイントであった。B社では、65未満の層(n=49)が8.15、65以上75未満の層(n=96)が8.35、75以上の層(n=78)が8.46であり、65未満層と75以上層の差は0.31ポイントであった。両社とも、相性スコアの区分が上がるにつれてピアレビュー平均が高くなる関係が認められた。

図1 相性スコア区分別 入社半年後ピアレビュー平均(A社)・図2 相性スコア区分別 入社半年後ピアレビュー平均(B社)

この層間の差は、配属時点における人と組織の相性が、入社後の職場適応の水準と関連しうることを示している。すなわち、入社時の相性スコアが低い人材は、半年後の職場適応においても相対的に課題を抱えやすいことが示唆される。とりわけ65未満の層は、65以上の層との平均値差が両社に共通して生じており、相性の低さが適応の遅れとして表れやすい区分とみてよいだろう。
この傾向は、配属前の相性スコアを早期フォローの判断材料として活用できる可能性を示している。具体的には、相性スコアが低い人材についてメンターの配置や面談頻度の引き上げといった重点支援の対象を入社時点で識別し、適応の遅れや評価の低位定着、ひいては早期離職や配属ミスマッチの懸念を未然に抑えることが考えられる。ただしそれぞれの層の中でも対象者によってピアレビューの得点に一定の個人差はあるほか、平均値差も非常に大きいとまではいえないため、相性スコア単独で個人の適応を決定づけるものではない点には留意を要する。

3.2 相関係数・p値の検証

次に、相性スコアとピアレビュースコアの相関係数を企業ごとに算出した。A社の相関係数は0.169(n=264)、B社は0.194(n=223)であり、いずれも統計的な有意性を表すp値は0.01を下回った。両社とも統計的に有意な正の相関が認められ、相性スコアの高さとピアレビュー評価の高さが連動する関係が、偶然では説明しにくい水準で確認された。

図3 相性スコアとピアレビュースコアの相関係数(A社・B社)

この結果は、平均値の比較で観察された層間の傾向が、変数間の連続的な関係としても裏づけられることを意味する。業種の異なる2社で同方向かつ有意な相関が再現された点は、本スコアとその後の適応との関連が特定企業の事情のみに依存するものではないことを示唆する。業種を越えた再現性の観点からも、本指標は一定の頑健性を備えるものとみてよいだろう。
一方で相関係数は0.15から0.20程度の範囲にとどまり、効果量としては大きくない。ピアレビュースコアは相性以外の多様な要因からも影響を受けるため、相性スコアは入社後の適応を説明する要素の一つとして位置づけ、他の指標と併用していくことが現実的と考えられる。しかしながら、対象者の行動の原因となる要素が多岐に渡る組織研究における基準としては、十分に高いと判断できる水準であった※5

※5 ただし、データの性質をふまえれば十分な予測力とも解釈できる。一般的に使用されるCohenの基準では、r = 0.10/0.30/0.50が相関係数の小中大の閾値とされる。しかし組織における人の心理・行動に関する研究では、対象者の行動の原因となる要素が多岐に渡るため、Bosco et al. (2015)は上記の基準はやや非現実的だとしている。また、違うソースから得られたデータ同士の相関関係を分析する場合などは、評価者の違いによる測定バイアス等も加味し、およそ0.20程度の相関があれば十分に大きいとも論じている。この基準に照らすと、本レポートの結果も十分に高い相関と判断ができる。(参考: Bosco, Aguinis, Singh, Field, & Piearce (2015). Correlational effect size benchmarks. Journal of Applied Psychology, 100(2), 431-449.)

4. まとめ・今後の展望

今回の分析から、配属時点の相性スコアと入社後の適応・活躍との間には一定の関連性があることが判明した。平均値の比較と相関分析の双方において、相性スコアが高い層ほど半年後のピアレビュー評価が高い傾向が両社に共通してみられ、その関係は統計的にも有意であった。新卒の配属基準に同スコアを取り入れることで、これまで担当者の経験や定性的な判断に依存しがちであった配属の意思決定を、データドリブンの観点から支援できる可能性がある。とりわけ、相性スコアが低い層を入社時点で把握し早期にフォローする運用は、適応支援の実務に直結する活用方法といえるだろう。もっとも本検証は2社・半年時点という限られた範囲にとどまるため、対象企業や観測期間を広げた継続的な検証が今後の課題となる。今後は、個社の特性に応じた相性スコアの算出を行う仕組みづくりにも注力し、より個別最適化された再現性の高い指標へとブラッシュアップを進めていきたい。

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